ナナ・ディツェル（1923-2005、デンマーク）が子供用にとデザインしたスツールが元祖「トリッセン」（デンマーク語で「糸巻き」）。彼女はそのスツールを元に様々なサイズのもの、そして用途のものをデザインしています。今ではそれら全てを総称して「トリッセン」シリーズと呼ぶよになってます。

この「ND105」の天板と台座の直径は同じ。そして形も同じ。つまり、上下ひっくり返しても、また戻しても形は全く同じ。またこの「スツール」はスツールとしてだけでなく、ソファの横に置いたり、サイドテーブルとしてもお使い頂ける。

デンマーク国内で加工／製造されるこのスツールに使われる材はドイツ産。近隣にある材からナナ・ディツェルの出身国であるデンマークで今も作られることの意味は私たちがこのスツールを皆様にご紹介したい理由の大きな一つです。

このスツールが最も使用されるのは地元デンマーク。デンマークでデザインされ、そして今もデンマーク作り続けられ、そしてそれを使う人がデンマークにいる。経済的な理由により、多くのデザインはデザインされた国とは全く関係のない第三国へ移るのが普通の時代です。その中にあって、このデザインをデンマーク国内に止めておきたいと思う工房の人達がいて、そしてそのデザインを使い続けたいと思う人達がいる。だから、このスツールはずっとデンマーク国内に留まっているのです。

作る者、そして使う人達、共にこのスツールのフォルムだけに魅了されているのではないと思う。形だけなら、どこの誰でも作れる。ナナ・ディツェルが生まれ、そして家族と共に暮らしたデンマーク。このスツールのデザインはこの国での日々の生活があって辿り着いたものであるはず。このデザインの源泉となるデンマークでの暮らしを尊ぶ在り方をこのスツールから感じ、そして作ること、そして使うことで、その大切なアイデンティティを守っていると感じさせる魅力がこのスツールにはあるんだと思う。

色々なものやことが世界基準となるこの時代。世界基準の源泉はそれぞれの国、そしてその国で暮らす人々のアイデンティティーにあるはず。世界基準となればなるほど、自らのアイデンティティーを意識しなければいけないかもしれない。周りが海に囲まれている私たちが暮らす国。自らのアイデンティティーを客観的に比べる機会は隣国が地続きとなっている国とは比べものにならないほど少ないのは事実。多くの人が自らのアイデンティティーに誇りを持つ国で生まれ、そして作られるスツールも持つくらいではその機会を得たことにはならない。でも、持ち、そして使うことで、あの国の人々のように、この国にも守るべきものやことがあると省みる機会になるとは思う。それは私たちのアイデンティティーを探る第一歩となるに違いない。そう信じて、このスツールをデンマークに行き、買い付けてきました。

構造はとても簡単。同じサイズの天板、そして台座が支柱を挟み込んでいるだけです。支柱への天板、そして台座の取り付けはスクリュー式でねじ込みます。綺麗に正確に削り出された質量のある無垢材が使われたこのスツールは簡単な構造ですが、安全にそして快適にお使い頂けます。また、スツールとしてだけでなく、ソファの側に置き、サイドテーブルとしても、そしてまた、花器等と共に緑を楽しむこともできます。シンプル、そして流行りに左右されることのないロングライフデザインはどんなシーンにも頼もしくお使い頂けます。

現在、このスツールを製造しているのはデンマークの「Snedkergaarden」（「スネカルガールデン」）。とても小さな工房ですが、昔ながらの製法でデンマーク伝統の木工技術を今に伝えています。