【北欧家具】Hans J. Wegner （ハンス J. ウェグナー）「RY8」書庫 by RY Mobler

【商品説明】
人は人生で何冊の本を読むのでしょうか。1996年をピークにどんどん本は売れなくなっています。売れなくなっているのは雑誌も含めて全ての「本」です。今なら、電子書籍の影響など、色々な影響があるとされていますが、本を読むことよりも、もっと面白いことが増えてしまったのが原因なのでしょうか。僕は小さい頃から本が大嫌い。小学生の夏休みに出される「読書感想文」が苦痛で、結局、本の最後にある誰かが書いた「あとがき」を見て、変てこな日本語に「リライト」し、適当に頑張って提出していました。成績なんて、全く覚えていません。それくらい、興味がありませんでした。今の世間と同じだと思うのです、この頃の僕。つまり、本を読むより、もっと面白いことが沢山あったということです。山を駆け回り、川で泳ぎ、広場で野球をし、木に登り、もう名前も忘れましたが近所の子供達と外でずっと遊んでいました。家に帰って、ご飯を食べて、少しテレビを見て寝る。こんな生活に「本を読む」なんて高等で趣のある「御趣味」なんて入り込める余地なんて全くありません。

ただ、不思議と今では本が好きで好きで仕方ない。ただ、本を読む時間がない。会社勤めをしていた頃はよかった。通勤電車の中でたっぷりと時間があったから。いつ頃からか本が好きになったのは。大学生になるまで、読んだ本といえば、教科書だけ。本を読むようになったのは、大学生になってから。時間が余ってた。また、人生に沢山の迷いがあったんですね。その答えを本に求めてました。沢山の本を読みました。本の中に自分が溶け込む感じです。誰かの伝記を読めば、なんとなくその人の人生をを生きた気になり、ちょっと嬉しい。推理小説を読めば、人の思い込みの深さに驚かされる。経営の本を読めば、まだ見ぬ社会の厳しさにたじろんだり。人が現実の人生で出会う人、行く場所、食べる物、そして直接触れる思想なんてとっても限られた数に違いありません。本を読むとその数が増え、他にいくつもの人生を仮想体験できたりして、実に面白い。こう考えると、外で遊び呆けていた小学生の頃も同じ気持ちが僕の中にあったのかもしれないと気付きます。「沢山のことを知りたい」、こんな気持ちがずっと昔からあったのだと思います。外に出て、知らない草を見る、始めての虫を見る、始めて泳ぐ川の匂いを感じる。よく考えると、同じような遊びをしていたようで、その中でいつも違う方法を見つけようとしていたような記憶があります。そんな子供だったのだと思います。

さて、Wegner、本が好きだったのでしょうか。もし、彼が本を好きでなかったとしたら、この家具、僕にとってはあまり興味ない。なんとなく、本棚は本が好きな人にデザインして欲しい。だって、本棚って本を入れるとその佇まいはほとんど本覆われ、判断基準が機能的な部分に偏ってしまうから。本が入ればそれでいい。機能と美しさの両立がデンマーク家具のいいところですが、本棚の美しさって、あまり必要ない。だからこそ、「だからなんでもいいじゃん」でなく「僕が読んだ本を収納するならこんな書庫がいい」と本が好きな人が持っていた書庫への想いを感じたい。そんな書庫に僕の本は収納したい、是非収納したい、特にとっておきの本は是非。

Wegnerは研究熱心で有名。色々な彼に関する書籍に目を通すと、彼が「ある本で見たあの椅子に触発され」などの記述があったりします。多分彼、沢山の本を読んだに違いありません。そんな本好きの彼が作る書庫がこれです。

この書庫にはどんは本が似合うのでしょうか。「これから読む本」でしょうか、それとも「すでに読んだ本」でしょうか。或いは、「いつでも使う本」でしょうか。僕はなんとなく、「いつでも使う本」を収納する書庫に見えるんですね。極端な例で言えば会社事務所や書斎で事務処理をするための書類、必要な時にすぐに手に取れるような本、そんなものを一時保管する書庫。一見、重厚な感じでどっしりとしていますが、なんとなく機動力を感じるのです。仕事をし始めそうな感じとでも言いましょうか。

なんとなく椅子で有名なWegnerです。彼の家具作りの基礎を作ったのは「デンマーク王立芸術アカデミー」、人のサイズ、そして動きを徹底的に研究して、デンマークでは「その道の祖」と言われているコーア・クリントが教えていた時代。Wegnerが椅子だけに特化したデザイナーと思い込んでしまうほど、彼の椅子が有名であることは確か。それらをデザインしたのと同じくらいの熱量で、学んだ人のサイズや動きを注視しながら、作った箱物家具、沢山あります。当時その箱物の家具の多くを製造したのがデンマークの「RY Møbler」。椅子で家具市場を賑わせていたWegnerが作る箱物の家具。他の家具メーカーも作りたかったに違いない。ただ、彼がデザインするものを製造し、求められるクオリティーをいつも確保できるメーカーは少なかったのかしれません。RY Møblerが作る家具のクオリティーの高さはおりがみつき。縦横の材が交わる部分の収め方等、超一級。是非現物を見てください。

ここで紹介する書庫、デンマークでみつけた時の姿はまさに「レ・ミゼラブル」（「ああ、無情」）。所々の突き板は剥がれ、誉の高い収まり部分は緩み、もう「ぐだぐだ」な状態でした。こんな状態なもの、コンフォートマート以外のバイヤーにとっては「ゴミ」なはず。なんせ、販売できる状態に戻すのに時間がかかる。そしてそれよりも、販売できる状態に戻せるかどうかの保証が全くない。「こんな子」を僕たちは見放しません。でも、うまくいい状態に戻せたとしても 、それに限界があると知ってます。また、限界がある状態だから、時間を掛ける割には販売価格はリーズナブルになることも知ってます。苦しいと分かっていても、それをあえてうけちゃうのがコンフォートマートの流儀。もちろん、打算的な考え方もないわけではありません。「練習台」です。これから先やってくる様々な修理修復が必要な家具。その家具達への難しい施しへの練習台とさせて頂くことです。

よくよく、修復具合をご覧下さい。普通に使える状態にまで戻しました。でも、僕らが普段販売する修理修復したRY Møblerの家具よりも状態が非常に悪い。ただ、この家具の修理修復の前の姿を知っている人なら「よくここまで戻せたねー」と、とっても感心して頂けるはず。精一杯の施しを注ぎ込みました。さらに数十年使って頂ける状態に戻した本来なら「ゴミ」となっていただろうこの子。そんなこの子を愛おしいと思って頂ける方、コンフォートマートのお客様の中にはいらっしゃるに違いない。そう信じてます。是非、ご検討下さいませ。

4段の棚、下から2段目（上から3段目）は固定です。固定されていない棚はダボの抜き差しで位置を自由に変えて頂けます。何箇所にわたり剥がれていた突き板、歴史的絵画の修復のように少しずつ丁寧に修復し元に戻しました。ですが、画像の通り、「何もなかったような状態」には戻せませんでした。側板、天板、底板、すべて分解し、再接着しています。強力な接着ですので、相当重い書籍をぱんぱんに詰め込んでもらっても、へっちゃらです。その他、所々にある傷や汚れは研磨やその他の方法でもどうしても除去できなかったものです。仕上げはオイル仕上ではなく、傷やシミを目立たせないように濡れ色にならないワックス仕上げを選択しています。お買い上げの際にはそのワックスを差し上げます（50ml）。それと、もちろんいつものように家具にはガタつきはありませんのでご安心下さい。