【商品説明】
このアルネ・ヴォッダーがデザインしたとされているドレッサー、使われている材は「希少材」と言われるローズウッド。美しい杢目と独自の色彩で世界を魅了してきた材です。15世紀から始まった欧州の大航海時代、「新大陸」として発見された中米、南米から採取され、本国（スペイン／ポルトガル）に持ち帰られたのが最初。それから今まで400年程の間、高級材として使われ、現在はワシントン条約により国際取引が厳しく規制されているローズウッド。これほどまでにどうして私たちはローズウッドに魅了されてしまったのでしょうか。

このローズウッド材がヨーロッパで高級材として使われ始めた頃、ヨーロッパの経済主義は「重商主義」。輸入を減らし、輸出を多くし、国に出来るだけお金を残そうとする考え方です。当時、機械類等の完成品を輸出することはありませんでしたから、輸出といえば、「原料」です。また、生の「腐ってしまうもの」は冷蔵庫などがない時代ですから、船の上や馬車の中で腐って商品価値がなくなってしまうので厳禁だったに違いありません。例えば軽い、そして腐らない香辛料などが当時頻繁に貿易品として活用されたのはこのためです。

輸出のための最良の品物はその輸出先で加工が可能な原料。技術的に保存方法が限られていたあの時代、その原料とは自然にある農作物がほとんどであったに違いありません。自然に農作物が採れる大きな肥沃な土地を持っている国があの時代の覇者。ヨーロッパの国々は覇者になるため、世界中を旅しより大きな領土を手に入れようとしたのです。そして大航海時代の幕開けとなります。

世界を旅するには立派な船が必要です。そんな船を作ることができる財を持つ人達はその国の王様。王様に富が集まる絶対君主制を敷いていた国々は「世界を旅したい者はいるか！」とヨーロッパ中に「冒険者」の募集を掛けたのです。

この募集に応募した者達はまだ見ぬ未開拓の土地に旅立ちました。旅は困難を極め、その国の戻って来れる者はほんの一握りの者だけ。

命を犠牲にしながら新しい土地に降り立った者達は「命に値する」その土地から持ち帰れる商品価値が高い農産物を必死で探します。そして見つけたのがローズウッドです。ヨーロッパにはないエキゾチックな杢理と雰囲気。「これは行けるぞ！」って見つけた者達は思ったに違いありません。商品としての木は海の長旅には最高です。腐らない。サイズもカットすればいかようにもなる。ただ、木は重いから多くは持ち帰れない。持ち帰り、製材し「これを見つけました」と王様に差し出します。恐らく大航海時代の最初、まだ造船技術がそれほど発達していない時代、家具などの大きなものを作るだけのローズウッドは持ち帰れなかっただろうと思います。だから、ローズウッドが見つかり、ヨーロッパに注目を浴びた頃、ローズウッドから作られるものは、箱であったり、装飾用の小さなものであったりに違いありません。

作るものが小さければ小さいほど、機能性ではなく、材料の趣向性、そして意匠性が商品価値となるよう加工されます。このローズウッドが持つ特殊な木理や輝きがより良く分かるよう加工品は上層階級の人々を魅了しました。またこのローズウッドの意匠性がよくわる小さなな加工品は持ち運びが便利で輸出も比較的楽だった。こうして他国に持ち込まれたローズウッドの加工品はヨーロッパ全土に広まり、その需要は大きく伸びました。需要は伸びましたが、木は重くかさばるので、遠路多くは運べません。供給が需要に追いつかず、ローズウッドは相当な高値で取引がされていたのだろうと思います。

大量の貨物を運べる造船技術を可能にした産業革命。技術革新により大きな力強い船を手に入れたヨーロッパ各国は「儲かる」ローズウッドを採りまくった。木工の機械技術がそれほど高くなかった時代、木材の加工には時間がかかります。採っても、加工品が出来ないので、需要はそのまま、供給が追いつかない状況が長く続きます。そして、第二次世界大戦が終わり、急速に機械加工技術が上がり、加工品の製作速度がものすごく早くなり、それまでの需要を消化するように大量のローズウッドから作られた商品が市場に出回るようになります。この中に今回紹介するような家具も含まれていた訳です。

モダン家具の目的は「いいものを大量につくり、規模の経済により価格を落としそれまでいい家具を買えなかった層にもいいものを届ける」です。以前はある特定の富裕層だけが知っていたローズウッドの魅了を今度は一般庶民にも伝えることが出来るようになったのです。ローズウッドから作られたからと言っても大量に作れますから、もう特段お高いものというイメージはなかったと思います。「あのローズウッドがこの価格で」との響であったに違いありません。

植林などを行なってこなかった原産国側、ローズウッドを採りすぎた結果、もう採れない状況にまで陥ります。そして植物多様性の観点からワシントン条約の規制により国際取引が原則禁止になり、現在に至ります。

ローズウッドはその魅力を人に見出され、そして枯渇寸前になるまで人が採り続けた材です。もうこういったことが許される時代ではありません。今では各国植林事業などを行いローズウッドを増やしています。持続可能なローズウッドが出来上がるまで100年程は待たなくてはならないかもしれません。

数百年の間、人を魅了して来たローズウッド、その表情には相当な魅力があります。ローズウッドで作られた加工品はこうしてヴィンテージ品として使えるものもまだまだ残っています。人が犯した愚かな伐採を省みるのは当たり前ですが、今まだあるローズウッドの加工品にその責任を転嫁する必要はありません。その逆に、過去に私たちが作った加工品は大切に使い、次世代にまで持って行くこと、そして最後まで使い切ってあげることは私たちの過去の愚行を改める行為になると思うのです。過去には戻れません。過去の失敗を反省し、素敵な未来を築けていけたらと思います。今はもう手に入らないローズウッドの過去の名品を将来に伝えていく行為は明るい未来を作ることに役立つと信じたいと思います。

このローズウッドのドレッサー、次にお使い頂く方は「2世代目」です（1世代目はデンマークの前の使用者）。2世代目を最後まで成しげられるよう、きっちりと修復しました。3世代目にまで持って行けるように丁寧にお使い頂けたらとっても嬉しいです。2世代目の途中で修理や修復が必要になれば、それなりの費用はかかるかと思いますが、是非、私たちにお声掛け下さい。精一杯お手伝い致します。

汚れ等が簡単に付かないように全身に艶を抑えたウレタン塗装を施してあります。またローズウッドは少し艶があった方が表情に品が出てより魅力が増すとの理由もウレタン塗装にした理由の一つです。

鏡は新品に交換しました。天板にはブラックガラスが使われていますが、このガラスも新品にしました。引き出しの出し入れもスムーズ。全く問題なくお使い頂けます。鏡の傾きは両側に付いているマイナスネジをドライバーで緩める／締めるでご調整下さい（運送途中の安全確保のため鏡は通常使用する角度とは違う角度で梱包致します。到着後、鏡の角度調整をお願い致します）。

一緒にお使い頂くお椅子は通常座高（43cm程）の食卓椅子だと少し高すぎます。座高が35cmから40cmのお椅子と一緒にお使い下さい。